外径加工におけるインサートの選択 Mitsubishi

インサート形状の選択インサートは、三角形や四角形といった形状や、大きさ、厚み、コーナR、チップブレーカなどの組み合わせで数多くの種類があります。インサートの選択は、工具材質の選定と同様に重要で、作業内容、被削材質、切削条件を考慮して行います。最適なインサートを選択することが作業能率を向上させ、加工コストを低減させます。

インサートの形状は、加工形態、切れ刃強度、クランプ強度、経済性の4点を総合的に考慮して選択します。 - 加工形態 - 切れ刃強度 - クランプ強度 - 経済性

外径・端面加工 CNC旋盤が普及している現在では、外径加工と端面加工が同時にできるインサート形状が最もよく使われます。これに適した形状は80°菱形で、荒加工から仕上げ加工まで幅広く対応できます。四角インサート（ネガティブ形）は両面が使用できるため、コーナー数が2倍に増え経済的ですが、外径と端面の同時加工はできません。倣い加工倣い加工には55°菱形または35°菱形を使います。切れ刃強度は80°菱形に及びませんが、最も幅広い加工形態に対応できる形状です。55°か35°かは、被削材の形状により決定します。この他にねじ切り加工や溝入れ加工、突切り加工などに適したインサート形状があります。

切れ刃の先端角（頂角）が大きいほど切れ刃強度が高く、断続切削に有利です。ただし加工形態の制約を受けやすくなります。連続切削など安定した切削加工では、切れ刃強度は若干劣りますが、コーナ数の多い三角インサートが有効です。切込み量が少ない場合は、切れ刃強度を確保しつつコーナ数の多い等辺不等六角形（80°トリゴン）も有効です。丸形インサートは刃先強度が最もあり、良好な仕上げ面を得るには最適ですが、背分力が大きく細物や薄物の加工でビビリ振動が発生しやすい欠点があります。コーナチェンジの管理も難しくなります。

クランプ強度は、インサートが大きいほど、また厚いほど有利になり、重切削向きとなります。左図に示すように、菱形インサート（四角インサート）は広い面で2面拘束ができるためクランプ強度に優れています。

ネガティブインサートの場合、片面4切れ刃で両面8切れ刃を利用できる四角インサートが最も経済的です。切れ刃先端角も90°で、強度もあります。次に経済的なのは、片面3切れ刃で両面6切れ刃の三角インサートです。

コーナRはインサートの角（コーナ）の丸み（曲率半径）です。コーナ半径、ノーズR、ノーズ半径とも呼ばれます。コーナRが大きいほど良好な仕上げ面と高い刃先強度が得られますが、反面切削抵抗が増大してビビリ振動が起きやすくなったり、切りくずの処理性が悪化する場合があります。また、切れ刃の位置は後退し加工径が大きくなります。逆にノーズRが小さくなると、加工径は小さくなります。同じホルダに搭載出来るインサートでもノーズRが異なると、加工寸法が変わってきますので注意が必要です。この場合は工具側のオフセット（加工径補正）をとることを忘れてはなりません。

R0.0 R0.4 R0.8

コーナRをRe（mm）、送り量をf（mm/rev）とすると、理論仕上げ面あらさh（μm）は、次式で求められます。（構成刃先が生じないと仮定）送り量が一定の場合、理論的にはコーナRを大きくすれば仕上げ面あらさは良好になります（図1）。ただしコーナRが同じで仕上げ切削など切込み量が小さい場合、図2のように切込み量に対して切れ刃長さが長くなり、切削厚さが減少します。そのため切削温度が低下し、鋼の切削加工では構成刃先が付着し、かえって仕上げ面あらさを悪化させることがあります。

h=f² /8Re x 1,000

送り

切込み

切込み

理論仕上げ面粗さ

理論仕上げ面粗さ

送り

図１　コーナRと仕上げ面粗さの関係

一般にコーナRは0.4～1.2mm程度が使用されますが、重切削では刃先強度の点から大きくとり、仕上げ切削では小さめにします。

過大なコーナRは、被削材半径方向の切削抵抗（背分力）を増大させ、被削材の円筒度*不良など加工精度の低下やビビリ振動発生の原因になります。

仕上げ切削など切込み量が少ない場合、コーナRが大きくなると、切りくずの流出方向は仕上げ面から離れる方向に制御されます（実質的に横切れ刃角が大きくなるのと同じ効果があるため）。また切りくず厚みが薄くなることで、切りくずが延びやすくなります。

研ぎ付け形インサート自体にチップブレーカを研ぎ付けたタイプで、研ぎ付けブレーカとも呼ばれます。切れ刃が研削されシャープで切れ味に優れる一方、右勝手または左勝手一方のみの専用ブレーカとなる欠点があります。

ブレーカピース切削条件に合わせた専用ブレーカピース、または数段階に調整できるブレーカピースをインサートの上面に取り付けたタイプです。特にセラミックス工具に多く用いられます。

モールデット形金型によりインサートに凹凸を付けたタイプです。ブレーカデザインの自由度があるため、切りくず処理範囲が広く、勝手なしで使えます。このため、複雑なツーリングに対応できるブレーカとして幅広く使われるようになりました。チップブレーカ選択のポイントは、被削材と切削条件です。被削材を切りくず処理の観点で分類すると、いわゆる一般鋼と炭素量がきわめて少ない軟鋼類、ステンレス鋼などの難削材、鋳鉄などの脆性材料に分けられます。

1つのチップブレーカでは、全ての加工領域で良好な切りくず処理は行えません。その種類は、左グラフのように、切込みと送りによって、重切削、中切削、軽切削、仕上げ切削といった切りくず処理領域で決められています。使用する切削条件に合わせて最適なチップブレーカを選択することが重要となります。

一般鋼の場合、切削条件に合わせてブレーカを選択します。中でも切込み量と送り量が特に重要で、この2つの条件によって分類される切削領域（仕上げ切削、軽切削、中切削、準重切削、重切削）に合わせてブレーカを選定します。各工具メーカとも切削領域別にブレーカを分類しています。

軟鋼や難削材の場合、切りくず処理に加え、耐溶着性や長寿命といった性能もブレーカに求められるため、これらもあわせて総合的に判断する必要があります。一般的には、切削温度の上昇を抑えるため、すくい角が大きく、切れ味の良いブレーカを使用します。ただしステンレス鋼のように加工硬化しやすい被削材の場合、刃先（切込み境界部）が損傷しやすいため、切れ刃強度も重要なポイントです。

鋳鉄の場合、切りくずが亀裂型のため、切りくずを積極的にカール、破断する必要がありません。一般的には切れ刃強度の確保と切削抵抗の低減が両立できるブレーカが適しています。

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