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岐阜製作所

岐阜製作所

生産性だけには留まらない品質を上げる高度自動化を実現

まざまな社会課題を解決するために欠かせない先端技術の活用。なかでも自動化や省人化は生産現場の未来を左右するターニングポイントとなるだろう。長時間無人で生産可能なモデルラインの構築に成功した岐阜製作所に、最前線の取り組みや今後の目標を聞いた。

手動機械からはじまったソリッドドリルの生産が場所や人を選ばない先端技術にまで昇華した

あらゆる指標向上を目指した自動化

 私が新入社員として岐阜製作所の一員となった1989(平成元)年、当時はろう付けドリルが主流でありソリッドドリルは発展途上のさなかでした。ほとんどの生産工程を手動機械に頼っていましたが、10年、20年と歳月を重ねるごとに設備投資を繰り返しながら生産数やラインナップを増やし、現在は主力製品に置き換わっています。

 2018年に高度自動化モデルとなるライン構想がスタートした際に、ターゲットとなったのもソリッドドリルです。省人化はもとより設備稼働率、生産性、工程能力あらゆる指標の向上を目指し、当部の生産技術課が少数精鋭でその任に当たることになりました。

 現在、私なりの基準ですが4つの区分のうち「自動測定」「自動段取り」「自動搬送」という3つの技術はすでに確立しています。段研削工程と溝刃付け研削工程における長時間の連続加工運転を阻害していた作業が最適化され、一部の品質保証に必要な工程以外は全て無人となったことで想定以上の品質安定化にも繋がりました。この工場でなし得たものは「場所を選ばず、人を選ばず」幅広く活用できる技術ですから、日本国内だけではなく海外の生産拠点での展開も想定しています。

 課題を残している区分はスマート化に繋がる「データ活用」です。稼働率や稼働状況の見える化は完了しておりますので、あとはそのデータを解析して、いかに「トラブルを未然に防ぐか」を模索しています。また小径のソリッドドリルをはじめ、CBN工具や金物製品の高度自動化ラインについても取り組みを開始しているほか、今後は海外展開に備えてスーパーバイザーを育成する準備も進めなくてはなりません。

 今年度、岐阜製作所は操業開始から50周年を迎えました。私が知っているだけでも約30年の期間で、ここまでの進化を遂げたことは非常に感慨深く思います。さまざまな方々が携わり大変な努力を続けてきた結果が実りました。その集大成として、2030年度までに岐阜製作所の自動化率を飛躍的に高めることを目標に、これからも挑戦を続けます。

内製による高度なNCプログラム

 「自動測定」は加工機内にセンサーやCCDカメラを搭載し、測定結果を次の加工品にフィードバックして自動補正をする仕組みです。寸法が規格中央値からどれだけ外れたらどう補正するか、測定失敗時の対応など問題は山積みでしたが、ノウハウが詰まった部分ですから外製できません。1年ほどトライアンドエラーを繰り返しながらプログラムを内製して寸法の中央値制御技術を確立しました。また「自動段取り」では溝刃付け加工機にNC制御の刃受け台を搭載しています。こちらは積み上げてきた知識が応用できたため、比較的スムーズに作業を自動化できました。

複数のロボットを組み合わせたライン

 「自動搬送」では、非接触通信が可能なRFID付きパレットに指令情報を持たせ、加工機のスケジュールを一括管理するシステムを構築しました。AMRと加工機を中継する固定式6軸ロボットアームなどを活用することで、工程間のワーク搬送の自動化も達成しています。無線通信や制御の手段、バッテリー確保といった問題を解決し、本格稼働したのは2021年の夏頃です。その後もブラッシュアップを続け、昨年度にはAMR上部の2軸コンベアを、動作の自由度が高い6軸ロボットアームに換装し、より長時間無人生産可能なラインを確立しています。

理想はクラウド上での一元管理

 加工機器のデータを集約し、クラウド型で一括管理するシステムも開発しています。それらの「データ活用」によって環境変化が加工結果にどのような影響を及ぼすのかなどを機械学習させるだけでなく、スマートファクトリー化の推進も試みています。現在、自動化の実現は段研削工程と溝刃付け研削工程に留まっておりますが、今後はさまざまな工程を高度に自動化し、生産性の改善、生産の予実管理、品質改善、予知保全など、全てをクラウド上で一元管理できる生産ラインを構築するのが理想です。

大前 雄平 生産技術部生産技術課 / 松田 信行 生産技術部生産技術課 / 樋渡 貴大 生産技術部生産技術課 / 平沢 奨吾 生産技術部生産技術課 / 田中 省吾 生産技術部生産技術課/課長