渡辺 彰一郎

 つい最近まで,切削加工業界において自動盤はニッチな工作機械とされていた.自動盤で加工される部品は,家電やプリンタシャフトに組み込まれる弱電部品や,自動車の小型部品が大半であった.しかし,ここ10年で自動盤により生産される部品の種類が飛躍的に増えており,工作機械としての重要性はますます高まっている.

 具体例としては,近年の自動車電動化に伴う各種センシング制御に不可欠な小型部品,エンジンのインジェクタおよび圧力センサ,ミッションやブレーキ制御を行なうアクチュエータ,自動運転や安全支援装置向け部品などが挙げられる.さらに,ロボット制御部品やインプラント医療用部品,水栓バルブなどの家庭用インフラ部品など,われわれの生活に欠かせない多くの部品加工を支えている.

 このように裾野が広がりつつある自動盤加工であるが,工具そのものや加工技術に関しても,ユーザーから高いレベルが求められるようになってきている.

 当社は,自動盤加工において,“外径・溝入れ・内径・後挽き・突切り加工”に加え,“ドリル・エンドミル加工”まで幅広くカバーし,自動盤加工のトータルツーリングが可能である数少ない総合工具メーカである.

 自動盤加工の多くのユーザーが抱える課題として,次のようなものがある.

①加工寸法精度の長時間安定維持
→ 加工不良数がゼロになれば,寸法調整や測定頻度が減り,無人化できる.

②高生産性
→ ワーク剛性やクランプ剛性が低い場合,切削条件アップが困難であるため,工具交換頻度を減らす必要がある.

 上記2点は,最終工程である突切り加工では,とくに顕著に影響する.その理由としては,突切り加工が,

・部品の全長寸法を決めること
・微妙な加工誤差が次ワーク寸法へ影響すること
・破損時にほかの工具を破損させる恐れが大きいこと

などが挙げられる.

 そこで当社では,ユーザーから好評を得ている溝入れ旋削工具「GY型」と,溝入れ突切り工具「GW型」の両シリーズに,新たな小物高精度加工用ホルダシリーズを追加した(写真1:2020年12月発売).

 本新製品は,従来品に対しホルダ剛性を大幅に向上させている.突切り加工における“高精度・高仕上面・長寿命”の3つを同時に実現した本製品について,次に紹介する.

ツールエンジニア(2021年 10月号)掲載

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