奥出 正樹  山口 健志

Coating Technology of CVD-Al2O3 for Coated Cemented Carbides

Masaki OKUDE  Kenji YAMAGUCHI

1. はじめに
 近年の金属加工技術では,環境負荷や製造コストの軽減の観点から,より高速・高送りといった過酷な条件下での切削が求められている。このような切削条件では,工具刃先が1000℃程度にまで上昇し,コーティング層の摩耗や異常損傷による刃先の破壊が生じるという問題がある。過酷な切削条件に適した硬質材料は優れた高温硬さと耐酸化性を有する必要があり,酸化アルミニウム(Al2O3)がその代表的な物質である。工具用被覆材料として用いられるAl2O3はおもに,付きまわり性が良く生産性の高い化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を用いて,超硬合金母材上に炭化チタン(TiC),窒化チタン(TiN),炭窒化チタン(TiCN)などのTi 化合物の積層構造のさらに上層として成膜される。本報では,CVD法によるAl2O3皮膜の成膜技術を概観し,さらに切削性能に影響を及ぼす多形制御,クラック制御,配向制御と異元素添加の関係に対する当社の開発技術を紹介する。

ものづくり・R&D レビュー 第2号(2013)掲載

つづきはPDFファイルをご覧ください