伊藤 正昭(Masaaki Ito)

 チタン合金は、その「軽くて強い」性質を生かして、航空機機体で特に高い強度が要求される個所や、ジェットエンジンの吸気・低圧部に多用されている。それらの部品は、残留する応力や歪みを除去するため、大きな素材から削り出すことが一般的である。素材の70~80%以上を切りくずにするため、切削加工の高能率化の要求が急激に高まってきている。

 しかし、チタン合金は図1に示すように、高能率加工を阻害する固有の材料特性を有している。熱伝導率は炭素鋼の1/6、ステンレスの1/2程度と極めて低い。切削熱は切りくずとともに放出されずに切れ刃の先端へ集中し、図2 のシミュレーションの通り、切削速度60 m/min で1,000℃ 近い高温となる。この高温が工具寿命低下につながることはいうまでもない。また、ヤング率の低さは特に薄肉部位を加工する際のびびりを誘発する。さらに、切削工具材料との親和性・反応性の高さは、切れ刃に切りくずの溶着しやすさにつながる。溶着は切りくず詰まりや切削面の荒れ、さらに剥離することで切れ刃のチッピングの要因となる。

機械技術(2018年 2月号)掲載

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